ごあいさつ

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2019.02.01


御 挨 拶

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長  川 鍋 一 朗


 初めに、昨年11月、富田名誉会長の栄えある旭日重光章の御受勲について、改めて心よりお慶び申し上げます。規制緩和の流れの中、富田会長の時代に改正タクシー特措法という新たな仕組みを作っていただいたことは、タクシー業界にとって非常に大きいことだと思っています。昨年6月の通常総会において私が会長をお引き受けしてから、約6ヶ月が経過いたしました。富田名誉会長が成し遂げられた功績は誠に大きく、その後を引き継ぐことは険しい道ではありますが、特に現在のタクシー業界のメインテーマである白タク或いはライドシェアの問題については、私も全力を尽くし戦っていく所存でございますので、会員の皆様の御理解と御協力をお願いいたします。

 さて、ライドシェアと称する白タク行為を解禁しようとする動きについては、昨年5月30日に開催されたIT総合戦略本部において、三木谷浩史本部員がライドシェアの実現を一項目とする徹底的な規制・制度改革の推進を求める意見書を提出、9月29日のIT総合戦略本部・シェアリングエコノミー検討会議では、三木谷氏が代表理事を務める新経済連盟からライドシェア実現のための法的環境整備について改めて提案がなされました。未来投資会議においては、民間議員である竹中平蔵氏がライドシェア解禁について度々発信、さらに9月11日に規制改革推進会議が決定した当面の重要事項においても、「インバウンド支援、オリ・パラ成功への規制改革」として「利用者ニーズに応える新たなタクシー等の移送サービス実現」が挙げられており、ライドシェア解禁を求める勢力は全く攻勢を緩めておりません。
 依然としてタクシー業界が危機的な状況に置かれていることには変わりなく、引き続き、規制改革推進会議、未来投資会議、国家戦略特別区域諮問会議、IT総合戦略本部、シェアリングエコノミー検討会議等、政府の各種会議の検討状況を注視していくと共に、与野党の議員連盟の先生方、国土交通省と連携をとりながら対応して参りたいと考えています。

 近年、羽田、成田、関西等の国際空港或いは沖縄県那覇港等の大型クルーズ船が入港する港で、訪日中国人を対象に中国国内のスマホアプリを使い在日中国人が自家用車、レンタカーで送迎、観光ガイドを行う白タク行為が横行しています。このような不法行為が各地で蔓延すれば、訪日中国人対象の白タクだけでなく、やがて他のアプリやSNSを使った外国人旅行客をターゲットとした白タクが次々と出現することになりかねません。既に一部では検挙された事例も出てきておりますが、このような白タクは断じて容認できるものではなく、国土交通省、警察庁等関係行政機関には、引き続き徹底した訪日中国人等を対象とした白タク行為の取り締まりを要望していきたいと考えています。

 一方、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、また訪日外国人が急速に増加している状況を踏まえ、タクシー業界では、今後、訪日外国人のニーズに対応した安全で快適なタクシーサービスの向上に取り組んでいく必要があると考えています。全タク連では、本年のなるべく早い段階で「訪日外国人向けタクシーサービス向上アクションプラン」を策定し、今後、その取組を進めていきたいと考えています。

 一昨年10月の正副会長会議において決定した11項目の事業活性化策から成る「今後新たに取り組む事項について」の対応として、東京においては、全国に先駆けて「初乗り距離短縮運賃」を昨年1月30日から実施し、「ちょい乗り」需要の創出等の効果をもたらしています。また、国土交通省は、運賃関係による活性化策として「事前確定運賃」の実証実験を昨年8月7日から10月6日まで実施しました。さらに今後は、「相乗り運賃(タクシーシェア)」「ダイナミックプライシング」「定期運賃(乗り放題)タクシー」の実証実験を行うこととされています。制度の導入に向け、国土交通省の指導を頂きながらこれらの取組を進めていきたいと考えています。
 過疎地域等における生活交通の確保に有効な手段である「乗合タクシー」については、これまでも全タク連で事例集を作成し、これを活用した地方自治体への訪問活動等により、乗合タクシーの導入に積極的に取り組んでいただくようお願いしてきました。乗合タクシーの普及促進は、交通空白地の対策に悩む自治体にとっても大変重要な取組であると考えていますので、改めて全会員の皆様の御理解と取組の推進をお願い申し上げます。
 昨年10月、トヨタ自動車から22年ぶりのタクシー専用車両であるJPNタクシーが発売されました。タクシー業界が切望していた環境性能に優れたLPGハイブリッド且つユニバーサルデザインである車両の発売により、今後「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」の導入が全国で急速に進んでいくことを期待しています。UDタクシーは、車いすや小さな子供連れの方、高齢者、妊婦の方等に優しい車両であるというだけでなく、セダン型車両に比べて車両後部のトランクスペースが確保されていることから、大きなスーツケース等を携帯する観光客の利用にも最適であり、特に東京では、オリンピック・パラリンピック開催までに1万台の導入を目指しているところです。国からの支援では、昨年12月の平成30年度与党税制改正大綱において、バリアフリー特例(重量税の初回分免税)が平成33年3月31日までの3年間延長されました。また、昨年のUDタクシーの補助について、国土交通省では大幅に予算額を拡充していただきましたが、まだ業界のニーズを満たすには難しい規模であり、全タク連といたしましては、引き続き、同省に対しUDタクシー導入補助に関する予算拡充を積極的に要望していきたいと考えています。一方、都道府県協会におかれては、地方公共団体に対し、UDタクシー導入補助制度の創設又は拡充を並行して積極的に要望していただきますようお願いいたします。

 昨年3月に策定された国の「働き方改革実行計画」においては、罰則付きの時間外労働の上限規制が設けられ、運送業については、5年間の猶予措置が設けられることになっているところですが、タクシー業界が魅力ある産業として生き残るためには、業界自らも働き方改革に向けた目に見える対応が求められています。このため、タクシー利用者の利便性を向上させて利用者を増加させるとともに、事業経営の効率化等につながる生産性の向上を図り、若年者や女性を始めとする乗務員の確保・育成等について一層の取組・対応を行うことが重要となっていることから、昨年9月20日に石井国土交通大臣から要請された「働き方改革の実現に向けたアクションプラン」を策定し、これに基づく着実且つ積極的な取組を実施することとしています。

 改正タクシー特措法については、27特定地域のうち、平成28年9月の長野交通圏及び京浜交通圏をはじめ、昨年12月までに21地域の協議会において、特定地域計画が承認されました。このうち18地域では、特定地域計画が国土交通大臣の認可を受け、全タク連が要望し創設していただいた全日制限(預かり休車制度)も活用して、順次適正化が実施されています。的確に事業者計画が実行され、事業適正化が推進されるよう期待しています。なお、全タク連では、改正タクシー特措法施行における課題・要望について、各都道府県協会への意見照会の上、平成28年1月18日付けで国土交通省に対し要望書を提出したところですが、特に、特定地域及び準特定地域の指定基準については、今なお改善を求める意見が寄せられているところです。引き続きこれらの課題等について、国土交通省を中心に要望して参りたいと考えています。
 最後になりますが、会員各位のますますの御繁栄と御健勝をお祈り申し上げ、御挨拶とさせていただきます。