ご 挨 拶
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長 富 田 昌 孝
会 長 富 田 昌 孝
平素、皆様にはタクシーをご利用頂き厚く御礼申し上げます。
さて、白タク問題については、「日本再興戦略2016」を受けて設置された「シェアリングエコノミー検討会議」において、昨年11月4日、中間報告書が公表されました。同報告書においては、随所にライドシェアを意識したと思われる表現が見受けられ、「現行規制の検証」として、「政府の規制改革推進会議等の場において、シェアリングエコノミーの推進に関し、国家戦略特区等の活用も含め、規制の在り方について、消費者の利便性向上、安全性の確保、外部不経済、国際競争力の強化等に留意しつつ、幅広く議論を行う。」とされたところです。
未来投資会議では、11月9日、10日の会合で竹中平蔵議員からライドシェアの推進について提言がなされました。また、11月30日、新経済連盟から経済産業大臣、国土交通大臣、IT戦略担当大臣、経済再生担当大臣、規制改革担当大臣に「ライドシェア実現に向けて」という提言が提出されました。ライドシェア解禁を求める勢力は全く攻勢を緩めておらず、依然としてタクシー業界は危機的な状況に置かれております。
引き続き、規制改革推進会議、国家戦略特区諮問会議、未来投資会議、IT総合戦略本部等、政府の各種会議の検討状況を注視していく必要があると考えております。
言うまでもなくライドシェアは、安全性が担保されない白タク行為であり、利用者の生命を危うくし、様々な法令を遵守し安全確保のためのコストをかけている安全・安心な公共交通機関であるタクシー事業の根幹を揺るがすとともに、与野党共同提案の議員立法により圧倒的多数の賛成の下成立した改正タクシー特措法の意義を著しく損なうものでもあり、断じて容認することはできません。業界一致団結し、地方自治体、労働組合、個人タクシー業界、バス業界、消費者団体等と連携し、このような動きを全力で阻止していきたいと考えております。
一方、タクシー業界としても、ライドシェアに反対するばかりでなく、公共交通機関として、更に地方創生の担い手として、利用者ニーズの多様化、訪日外国人の増加等を踏まえたサービスの高度化を図っていかなくてはならないと考えております。昨年6月全タク連に設置したライドシェア問題対策特別委員会では、タクシーサービスの更なる高度化策の検討を掲げて集中的な議論を行い、11項目の事業活性化策から成る「今後新たに取り組む事項について」を取りまとめ、10月12日の正副会長会議で了承をいただきました。このうち、「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」、「第2種免許緩和」「乗合タクシー」については、全国の業界で取り組むべきものとして、「初乗り距離短縮運賃」「相乗り運賃(タクシーシェア)」「事前確定運賃」「ダイナミックプライシング」「定期運賃(乗り放題)タクシー」「相互レイティング」「タクシー全面広告」「訪日外国人等の富裕層の需要に対応するためのサービス」については、各地域のタクシー業界において、それぞれの地域の状況を踏まえて検討され、実施可能な項目について取組を図ることが望まれるものとして提案したものです。
相乗り運賃(タクシーシェア)や事前確定運賃等、制度改正が必要な項目も多くあり、今後国土交通省等との調整が重要になって参りますが、東京では先行して初乗り短縮運賃に取り組み、本年の早い段階で実施されるのではないかと期待しております。会員の皆様におかれては、本趣旨をご理解いただき、海外のライドシェアが行っていることで評判の良いものはタクシーで全部やるという気持ちで取り組まれるようお願い申し上げます。
また、過疎地域等における生活交通の確保に有効な手段である「乗合タクシー」については、これまでも各地域多くの取組事例があり、昨年、それらの取組を全タク連において事例集として取りまとめ、これらを活用した地方自治体への訪問活動等により、乗合タクシーの導入に積極的に取り組んで頂くようお願いしてきました。また、県協会が行う訪問活動等にあたり、国土交通省から「各地方運輸局等への同行支援」などの要請も行って頂いたところであります。これら乗合タクシーの普及促進は、交通空白地の対策に悩む自治体にウーバー等の勢力が入り込むことを防ぐことにも繋がる大変重要な取組であると考えておりますので、改めて全会員の皆様のご理解をお願い申し上げます。
改正タクシー特措法については、昨年新たに指定された8地域を含む27特定地域のうち、仙台市、秋田交通圏、京浜交通圏、新潟交通圏、長野交通圏、福岡交通圏、長崎交通圏の協議会において特定地域計画が承認されました。これらの地域においては、全タク連が要望し創設していただいた全日制限(預かり休車制度)も活用して、的確に事業者計画が作成・実行され、事業適正化が推進されるよう期待しております。また、後に続く地域におきましても、速やかに特定地域計画が作成され、改正タクシー特措法の趣旨が正しかったことを証明していただきたいと考えております。なお、改正タクシー特措法の運用にあたって、改善していただきたい様々な課題等について、引き続き国土交通省を中心に要望していきたいと考えております。
また、特定地域及び準特定地域における公定幅運賃の下限割れ事業者による国の運賃変更命令を巡る差止請求については、一昨年末から一審及び二審の判決で国の敗訴が続いております。これを受けて、国土交通省は、下限割れ事業者が存在する地域の公定幅運賃の下限を見直すこととし、昨年の8月から10月、7地域において下限の引き下げがなされました。本件は、改正タクシー特措法の施行によって収斂しつつあった運賃問題を再び混乱に陥れかねない重大な問題だと考えており、国土交通省におかれては、タクシー事業の適正化及び活性化を推進するというタクシー特措法の目的を充分に踏まえて対応いただきたいと考えております。
本年は、トヨタ自動車株式会社から、次世代タクシーが発売される予定です。昨年は、この次世代タクシーに対する国等からの税・財政面からの支援要請を積極的に展開してまいりました。年末の与党税制大綱では、次世代タクシーが税制特例の対象になるなど普及に向けた支援体制が整いつつあります。東京オリンピック・パラリンピックを見据え、国内はもとより訪日外国人にも日本のタクシーの素晴らしさをアピールできるようその普及に努めて参りたいと考えております。
最後になりますが、お客様、従業員、経営者にとって良き産業へ発展するため、全力を尽くす所存でございますので、従来以上のご理解とご支援を賜りますようお願いし、また会員各位の御繁栄と御健勝をお祈りして、私のご挨拶とさせて頂きます。