ごあいさつ

年頭の辞

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2016.01.01


年 頭 の 辞

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長  富 田 昌 孝


 新年明けましておめでとうございます。平成28年の新春を迎え、謹んで年頭の御挨拶を申し上げます。
 さて、昨年は、これまでと全く異なる形の白タク問題が発生し、タクシー業界は、戦後70年で最大の危機に陥っております。昨年2月、外資系企業のウーバーが、福岡市でライドシェア実験と称する白タク行為を行いました。この実験は国土交通省から道路運送法違反との指導を受け中止となりましたが、白タク問題はこれに止まらず、その後、ウーバーのライバルであるリフトに3億ドル出資し自らも役員に就任した楽天の三木谷社長が代表理事を務める新経済連盟から、政府の規制改革会議、国家戦略特区諮問会議、IT総合戦略本部に対し、インターネットを利用した白タク行為を合法化すべく道路運送法の改正等について要望がなされています。
 また、9月9日開催された国家戦略特区諮問会議において、竹中平蔵氏ら5人の民間議員より「過疎地域等における自家用ライドシェアの拡大」なる意見書の提出がなされるとともに、特区に指定された複数の自治体から自家用ライドシェアの提案がなされております。
 さらに、10月20日の国家戦略特区諮問会議においては、安倍総理が「日本を訪れる外国の方々の滞在経験を、より便利で快適なものとしていかなければなりません。このため、旅館でなくても短期に宿泊できる住居を広げていく。過疎地等での観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する。」と発言されており、現在も予断を許さぬ状況が続いております。
 言うまでもなくライドシェアは、安全性が担保されない白タク行為であり、利用者の生命を危うくし、様々な法令を遵守し安全確保のためのコストをかけている安全・安心な公共交通機関であるタクシー事業の根幹を揺るがすとともに、与野党共同提案の議員立法により圧倒的多数の賛成の下成立した改正タクシー特措法の意義を著しく損なうものでもあり、断じて容認することはできません。
 全タク連では、6月の総会及び11月の事業者大会において、白タク行為を断固阻止する旨の決議を行い、各都道府県協会と共に自公民三党の国会議員に対して陳情を重ねてきました。引き続き、全ての会員の皆様が危機意識を共有し、地元国会議員、自治体の首長及び地方議会の先生方等へ陳情頂きますよう宜しく御願い申し上げます。
 一方、タクシー業界としても、ライドシェアに反対するばかりでなく、公共交通機関として、さらに地方創生の担い手として、利用者ニーズの多様化、訪日外国人の増加等を踏まえ、乗合タクシーの導入、観光タクシーの推進、スマートフォンを活用した配車システムの推進など、利用者目線に立った事業活性化への取り組みを一層進めるとともに、こうした取り組みを「全国タクシーガイド」等を通じて、内外に積極的に発信して参ります。
 改正タクシー特措法については、昨年1月30日、ようやく国土交通省から特定地域の指定基準が示されました。その後、特定地域の指定基準の数値的指標に合致した29候補地が示され、準特定地域協議会における特定地域指定への同意・不同意の議論、運輸審議会への諮問・答申を経て、現在、19地域が特定地域として指定されております。今後、これらの地域の協会及び事業者の皆様には、特定地域計画の作成等で大変な御負担をおかけしますが、事業適正化で大成功を収め、改正タクシー特措法の趣旨が正しかったことを証明し、後に続く地域に勇気を与えて頂きたいと願っております。なお、昨年9月、全タク連では、各都道府県協会に対し、タクシー特措法施行における課題・要望について意見照会を行いました。今後、頂いた御意見を基に、特定地域及び準特定地域の指定基準の見直し、預かり休車制度の創設をはじめとするタクシー特措法の運用について、国土交通省を中心に要望していきたいと考えております。
 また、特定地域及び準特定地域における公定幅運賃の下限割れ事業者による国の運賃変更命令を巡る差止請求について、大阪地裁において、昨年11月20日及び12月16日、国の運賃変更命令等の処分を差し止める旨の判決がなされました。本件は、改正タクシー特措法の施行によって収斂しつつあった運賃問題を再び混乱に陥れかねない重大な問題だと考えております。その後、国は11月20日の判決については控訴しており、引き続き注視していく必要があると考えております。
 改正タクシー業務適正化特別措置法については、昨年10月1日施行され、これまで13地域で行われてきたタクシー運転者登録制度が、全国へ拡大されました。本件については、各地域における登録実施機関及び認定講習実施機関等の業務にあたる各都道府県協会の御理解・御協力により、施行以降大きな問題も無く新制度に移行することができました。厳しい環境下において御尽力頂き、厚く御礼申し上げます。
 新潟交通圏のタクシー事業者が実施した運賃変更に対し公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令がなされた件については、これまで関係事業者は、審判を通じて、当該対応が独占禁止法違反ではなかったことについて主張してきたところですが、昨年2月27日、公正取引委員会から審判請求を棄却する旨の審決がなされました。これを受け、関係事業者は、3月30日、審決の取消を求めて東京高等裁判所へ提訴しました。公正取引委員会においてこのような内容の審決がなされたことは誠に遺憾であり、全タク連としては、新潟業界の取組に対して引き続き支援を行っていきたいと考えております。
 最後になりますが、本年もお客様、従業員、経営者にとって良き産業へ発展するため、全力を尽くす所存でございますので、従来以上の御理解と御支援を賜りますよう御願いし、また会員各位の御繁栄と御健勝をお祈りして、年頭の御挨拶といたします。