御 挨 拶
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
会 長 川 鍋 一 朗
会 長 川 鍋 一 朗

令和7年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
昨年は、コロナ禍が終息し、インバウンド旅行者の大幅な増加を受け、タクシーの供給不足が指摘される中、地理試験の廃止や二種免許取得の効率化等様々な国の支援措置を活用し、コロナ禍で約2割減少したタクシー乗務員の増加に全力を傾注した一年でした。若者・女性・元気な中高年等良質なドライバーの雇用に向けて積極的な取組みを進めた結果、運賃改定の効果もあり全国的に着実に増え続け、昨年11月末においては、コロナ禍発生直後の令和2年3月末と比較して86%までドライバー数は回復しました。
また、運賃の関連では令和2年以降、101運賃ブロックのうち99ブロックにおいて運賃改定が行われました。なお、国土交通省においては、今後の運賃改定を定期的かつ迅速に実施するため、運賃改定手続きの開始に必要ないわゆる申請率7割ルールについて5割に緩和するとともに、全国運賃ブロックを101から69に見直し、昨年末に各地方運輸局において公示されたところです。
加えて、需要の多い朝の時間帯に対応するための乗務シフトの見直し、インバウンドで増加した観光客等に対応するための空港・駅の乗り場改善、ニセコ、軽井沢等における営業区域を超えた応援部隊の派遣を始め、全国的な規模での日本版ライドシェア(自家用車活用事業)の展開、公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)への参画等、交通空白の解消に向けてあらゆる取組みを進めて参りました。
昨年3月末に創設された日本版ライドシェアは、地域交通の「担い手」や「移動の足」不足解消のため、タクシー配車アプリデータ等を活用してタクシーが不足する地域・時期・時間帯を特定し、タクシー事業者の管理の下、地域の自家用車及び一般ドライバーを活用して不足分を供給する制度であり、国土交通大臣の指導の下、昨年末には全都道府県において運行が開始されました。
また、雨天時・酷暑における対応、イベント開催時における輸送力向上方策、災害対応時における同制度の活用、配車アプリを使用しない同制度の導入等の日本版ライドシェアのバージョンアップにより更に柔軟な運用が可能となり、既に導入済みの地域においても地域の実情や利用者のニーズに応じた改善が可能となっています。
公共ライドシェアは、夜間など時間帯による空白の概念の導入、運送の対価をタクシー運賃の約8割とする等の運用の改善がなされた昨年1月以降、これまでを大きく上回るペースの57主体で新たに導入されています。
また、昨年4月からタクシー事業者と市町村・NPO等との共同輸送サービスが可能となり、従来からの事業者協力型自家用有償旅客運送と併せて、神奈川県三浦市、石川県加賀市、小松市及び大分県別府市等において、タクシー事業者による運行管理及び車両整備等を実施する運行が多くみられています。
国土交通省においては、「交通空白」の解消に向けて昨年7月に国土交通大臣を本部長とする交通空白解消本部が設置され、自治体や交通事業者と連携し、地域の足や観光の足の確保に向けた取組みを推進しています。
昨年12月には中間とりまとめがなされ、日本版ライドシェア、公共ライドシェア等交通空白解消のツールは着実に浸透しているものの、全国の交通空白の解消は緒に就いたばかりであるため、令和7年度〜9年度の3か年を集中対策期間として、自治体や交通事業者による個々の交通空白解消の取組みを後押しすることとされています。全タク連としても引き続き、交通空白解消に向けた取組みを進めて参ります。
我々タクシー事業者は、少子・高齢化社会の急速な進展並びにGX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)の大きな潮流の中、地域公共交通機関として課せられた重要な使命を果たすため、
- 復活したインバウンド対応のための外国人在留資格特定技能1号制度を活用した外国人ドライバーの雇用
- 「事業用自動車総合安全プラン2025」に基づいた交通事故防止の徹底
- 2050年カーボンニュートラル達成を目指す電動車等の普及促進等による環境対策の推進
- ユニバーサルデザイン車両の普及促進等によるケア輸送体制の整備
- 妊婦応援タクシー・育児支援タクシーの普及促進による子育て支援の推進
- 乗合タクシーの普及促進による地域の高齢者等の移動支援の推進
- 地方自治体や地域の観光事業者と一体となった観光地における二次交通ネットワークの充実
- 利用者利便の向上及び需要拡大に向けたスマホ配車の普及促進及びキャッシュレス化の推進
- 交通空白の解消に向けた日本版ライドシェア及び公共ライドシェアの普及促進
等諸施策を積極的に推進し、タクシー事業の進化に努めて参ります。
一方、いわゆる欧米型のライドシェアは、事業主体が運行及び車両整備管理等について、民事・刑事上の法的な最終責任を負わない点が最大の問題で、加えて、運転者を独立した個人事業主と位置づけ、厳格化する労働関係法令の規制を逃れようとするもので、ワーキングプア層を増加させ、交通渋滞や事故を増加させるとともに、CO2排出量を増大させ、2050年カーボンニュートラル実現にも逆行するものです。
政府は、「デジタル行財政改革取りまとめ2024」、「経済財政運営と改革の基本方針2024」及び「規制改革実施計画(令和6年6月21日閣議決定)」において、「全国の移動の足不足の解消に向けて、自家用車活用事業等について、モニタリングを進め、検証を行い、並行して、タクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業について、法制度を含めて事業の在り方の議論を進める」こととされています。
私どもハイヤー・タクシー事業者は、地方創生を担う重要な社会インフラであるという認識の下、今後とも国民に対する安全・安心な輸送サービスを確保すべく、業界一致団結し、労働組合、個人タクシー業界、バス業界、自動車メーカー、消費者団体、「交通の安全と労働を考える市民会議」そして全国の地方自治体と緊密に連携し、ライドシェア新法の制定に断固として反対して参ります。
自動運転については、アメリカや中国ではドライバーが乗車しないタクシーが実用化され商用で走っています。国内においても国土交通省の交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会自動運転ワーキンググループ等において、自動運転タクシーのビジネスモデルに対応した管理の受委託、運行管理、認証基準等の具体化による安全性の確保、事故原因究明を通じた再発防止、被害が生じた場合における補償の観点から、今後の自動運転タクシーの社会実装のための制度のあり方について検討が行われております。中長期的な生産年齢人口の減少を踏まえると、自動運転タクシーはタクシー供給力の確保のための有効な手段となるものと期待されることから、現在のタクシー事業と同等か、それ以上の安全性がタクシー事業者の責任において確保されることを基本として、私どもタクシー業界においてもこれらの検討に積極的に参画しつつ、引き続き自動運転の動向について注視して参ります。
また、タクシーのDXに必要不可欠なソフトメーターについては、JIS化と並行して昨年「国土交通省ソフトメーター認定制度検討会」が設置され、議論が進められてきました。昨年11月には認定要領案がパブリックコメントに付されたところであり、今後当該認定要領に則ったソフトメーターの開発・実用化が期待されます。
昨年は、規制緩和による柔軟な仕組みと配車アプリ等技術革新によりタクシーが大きく進化した1年でした。本年も交通空白の解消、移動の足の確保に一致団結して引き続き全力で取組みを進めて参ります。
最後になりましたが、皆様の益々のご健勝とご発展を祈念申し上げ、年頭のご挨拶といたします。